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「Thelonious Himself」Thelonious Monk
「Thelonious Himself」Thelonious Monk

 
 
 18歳のとき、僕は浪人生活1年目でひたすらおなじ音楽をウォークマンで聴き続けていた。テープは5本。3本はボブ・ディランのブートレッグシリーズ。そして、あとの2本はThelonious Monkのhimselfとsolo monk。とにかく、2年くらい、毎日飽きることなく歩きながら、電車の中で、ひたすら聴き続けた。途中から、ウォークマン(テープ)からディスクマン(CD)に変えてあまり聴かなくなってしまったけれど。  
 とくにジャズを聴くきっかけとなったThelonious Monkのhimselfは、今までの人生の中で一番聴いたアルバムかもしれない。  

 絵の予備校で偶然そのCDを手に持ってた女の子から奪うように借りた。理由は簡単でその女の子がかわいかったからで。きっかけなんてものはじつに単純なものだけど、その女の子がどんな音楽を聴いてんだろうという軽い気持ちで聴いたら、よい意味で期待を裏切られて、ありじごくのようにその音楽からはなれられなくなってしまった。  

 たぶん、1998年ぐらいのことで、音楽的にはごちゃ混ぜな時代。アナログレコードが見直されてきていて、友達とよく中古レコード屋をはしごしたりしていた。買えるレコードは800円から1200円の間。それぐらい出せばいいレコードが買えた。月のこづかいはだいたい月初めにレコードに消えていったけど、今思えば、当たりのレコードを嗅ぎ分ける力はこの時期に培われたのかもしれない。そんな時代に僕はThelonious Monk himselfと出会った。  

 ブロックコード、不協和音、正しい言い方は専門家ではないのでよくわからないのだけど左手の音に夢中になった。とくにラウンドミッドナイトの30分くらいのアウトテイクは、どのように曲が、微妙な音の違いをなんとか理想のカタチに近づけようとするThelonious Monkのビジョンが伝わってきて何度も聴いたけど、聴けば聴くほどわからない。  

 音楽の才能は残念ながら僕にはなかったけど、たぶん、作っている人には理想の音が鳴っていて、それになんとか近づけようとしているのだと思う。僕は絵を描く人なので、その気持ちはよくわかる。その鳴っている音が、独自な音で、それが人の心を惹き付けてしまうのだと思う。  

 自分が絵を描く時によく悩む問題で、オリジナリティって必要ないのではと、思った時期があって、今でもその考え方は拭いきれてないけれど、Thelonious Monkの音はThelonious Monkにしか出せない。つまり、オリジナルなわけである。と、いうことはオリジナルというものは存在するのだけど、残念ながら僕には見つけられていない気がする。逆にオリジナリティがないことが良いと思う時期もあり、揺れ動いているのだけど、絵を描き続けていれば見つかる答えのような気がする。ときどきオリジナリティをはき違えて、人を驚かすことをテーマにしている絵などを見ていると嫌な気分になるので、心配性の僕はなかなかゆっくりとしか駒を進めないのかもしれない。  

 しかし、Thelonious Monkの音楽は今の僕にはすこし悲しすぎるので聴くことはない。たぶん、多感な時期に聴いていたこともあり、いろんな思い出が音楽にこびりついていて、よかったことも悪かったことも思い出してしまって胸が苦しくなるからだと思う。
 
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